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鼠径ヘルニアになったら喫煙はNG!生活習慣改善と予防
2024.02.07
こんにちは。調布駅前そけいヘルニアクリニックの菅間(かんま)です。
以前のブログ「鼠径ヘルニアと生活習慣の関係性」でも紹介したように、鼠径ヘルニアは誰もがなりうる病気です。身体の構造上、男性に多く、年齢が高くなるほど発症の確率はあがります。
誰にでも発症のリスクはありますが、「鼠径ヘルニアになりやすい人」という傾向は分かっています。そして生活習慣の改善によって、発症リスクを下げられるかもしれません。この記事を読んで、少しでも予防に役立てていただけたら幸いです。
鼠径ヘルニアは腹部に力をこめると発症しやすい
生活習慣について解説する前に、簡単に鼠径ヘルニアのメカニズムについて説明します。
鼠径ヘルニアは、日常的にお腹のあたりに力がかかることが原因で発症しやすくなります。重い荷物を持つことの多い力仕事や立ち仕事が長い方も、鼠径ヘルニアになりやすいことが分かっています。お腹に力を込める状態を「腹圧がかかる」といい、トイレでいきむ動作も含まれます。
鼠径ヘルニアは、足の付け根(鼠径部)に膨らみができる病気で、脱腸とも呼ばれます。これは腸の一部(腸管)や内臓脂肪が皮膚の下へ飛び出すために起こるものです。
お腹の中では、腹膜という筋肉でできた壁が臓器を守るようにして覆っています。しかし鼠径部には、筋肉ではなく筋膜のみで覆われている部位があり、加齢とともに鼠径部の筋膜が薄くなると、内部の腸管などが飛び出しやすくなります。
一生のうち、男性の3人に1人は鼠径ヘルニアを発症すると言われており、誰もがなりうる病気です。
鼠径ヘルニアの原因となる生活習慣
鼠径ヘルニアを「確実に防げる」という予防法はありません。しかし、生活習慣によって発症のリスクを下げることは可能です。
逆に言えば、日常生活の過ごし方によってはリスクが高まることにもなります。
肥満である
鼠径ヘルニアの原因の1つとして、肥満が挙げられます。鼠径ヘルニアは、内臓脂肪が皮膚の下まで飛び出す病気なので、脂肪が増えてより重くなれば発症リスクが高まります。体重オーバーの方はダイエットによって鼠径ヘルニアのリスクを軽減できるでしょう。
ただし、痩せ型の方も発症することがあります。
喫煙している
腹圧がかかることが、鼠径ヘルニアのきっかけになると説明しました。トイレでの動作のほか、咳やくしゃみも同様に腹圧がかかります。したがって、よく咳をする方は、鼠径ヘルニアになりやすいといえます。
タバコも鼠径ヘルニアのリスクを高めます。タバコは気道に炎症を起こすことで慢性的に気道が狭くなり(これを専門用語で閉塞性換気障害といいます)、呼吸をするたびに少しずつ腹圧がかかるようになります。その結果、鼠径ヘルニアの発症する可能性が高まると考えられます。
また鼠径ヘルニアの手術は全身麻酔を用いて行われることが一般的になっていますが、喫煙者は術後に肺炎や心筋梗塞を引き起こす可能性が3~5倍になるという報告もあります。予防の点でも、発症後のリスクを抑えるためにも禁煙は欠かせません。
重い荷物を持つことが多い
家具の配送や引越しをはじめ、重いものを運搬する職業は、特に鼠径ヘルニアを発症するリスクが高いといえます。また、外回りの多い営業職、接客や販売などで長時間の立ち仕事をしている職業の方も同様に腹圧がかかりやすいため注意が必要です。
その他、腹圧のかかる動作全般
ここまでに紹介した項目以外の腹圧がかかる動作にもリスクはあります。
草むしりなど長時間しゃがんだ姿勢をとること、トランペットやサックスなどの吹奏楽器の演奏、便秘症、前立腺肥大症、ガードルやコルセットを慢性的に使用するなども、腹圧と相関関係があります。
鼠径ヘルニアの予防と対策
「リスク」「注意」という表現を多く使いましたが、鼠径ヘルニアはただちに生命にかかわる病気ではありません。完全に予防する方法はないため、仮に発症したとしても病状を悪化させないことが重要です。
たとえば運送業の方が鼠径ヘルニアになったら、仕事を長期間休むのは難しいケースも多いでしょう。まずは肥満を避ける、禁煙するなど、自分でコントロールできることから取り組みましょう。
また早めに医療機関を受診することも大切です。鼠径ヘルニアの初期はほぼ痛みがないので、放置されがちです。しかし手術以外の方法では治りません。症状が悪化する前なら、比較的負担の少ない手術方法で治療できます。
筋トレのリスクも知っておく
鼠径ヘルニアの発症前は、筋トレによる予防効果があると考えられます。しかし、すでに鼠径ヘルニアが発症した方は、腹圧のかかる運動、特に筋トレは避けましょう。鼠径部にできた穴が広がりやすくなるため、鼠径ヘルニアがさらに悪化してしまうと考えてください。
Q. 鼠径ヘルニアになりやすい人とは?
中高年以上の男性なら、だれでも発症する可能性があります。特にお腹に力のかかる動作には注意が必要です。
Q. 鼠径ヘルニアと生活習慣は関係ある?
喫煙、飲酒、肥満などの生活習慣によって鼠径ヘルニアの発症リスクは上昇すると考えられます。また慢性的な便秘症や咳、くしゃみなども鼠径ヘルニアのきっかけになることがあります。
Q. 今すぐできる鼠径ヘルニアの予防方法は?
太り気味の方は減量すること、また喫煙者が禁煙することも、鼠径ヘルニアの予防に一定の効果があるでしょう。
重い荷物を持つ、長時間立ちっぱなしの状態を避けるなども大切なポイントです。
この記事の著者
菅間 剛(かんま たけし)
2007年、慶応義塾大学医学部卒業。横浜市立市民病院、練馬総合病院、千葉西総合病院、東京医科歯科大学医学部医歯学総合研究科、世田谷北部病院などの麻酔科に勤務し、5000件を超える手術麻酔を担当。2023年、調布駅前そけいヘルニアクリニック開院。
東京都調布市出身で、父も調布市内で「菅間医院」の院長をつとめる。