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鼠径ヘルニアは加齢すると発症しやすい?年齢との関係を解説

2024.02.06

こんにちは。調布駅前そけいヘルニアクリニックの菅間(かんま)です。

鼠径ヘルニアは、中高年の男性に多くみられる疾患です。「高齢になるほど、発症のリスクが高まるのでしょうか」という質問は、実際に患者さんからよく聞かれます。

今回は、厚生労働省の最新データベースを使ってもっとも発症しやすい好発年齢について考えてみましょう。

鼠径ヘルニアの発症リスクが高いのは50~70代前半の男性

一般的に、鼠径ヘルニアの発症が多いのは50~60代男性と言われていますが、はたして本当なのか、統計データを調べてみました。

厚生労働省は、全国の保険請求情報を集めた「NDBオープンデータ」を公開しています。鼠径ヘルニアはもちろんさまざまな治療や手術を受け、各医療機関から保険請求が行われた情報が詰まったビッグデータで、誰でもアクセスできます。

この記事執筆時の最新データは、令和3年度のレセプト情報です。

厚生労働省データベースに見る鼠径ヘルニアの好発年齢

これは、NDBオープンデータをもとに当院が作成したグラフです。男性の割合が89%を占めるため、男性のみにしぼって5歳ずつの年齢分布を表しています。

もっと多いのは70~74歳で、次いで60~64歳、65~69歳、55~59歳の順に多くなっていることがわかります。50~74歳を合わせると、全年齢の64%に達することが分かりました。

このデータは、医療機関で手術を受けたときの年齢なので、厳密には発症からは一定の月日が経過しているものです。発症後に1年以上放置してから手術を受けている方もいると思われますが、発症時の年齢と手術時の年齢を比べても、大きな誤差はないものと考えられます。

75歳以上の高齢者でも、鼠径ヘルニアの手術は安全に行えるという論文は多数発表されていますが、手術を受けて治療する人数は少なくなっています。

当院を受診する方の年齢層

開院から約半年間、当院にて手術を受けられた方の年齢分布を調べると、平均62.1歳でした。厚生労働省のデータによる全国平均とほぼ一致していると言ってよいでしょう。

また今のところ最高齢は83歳の患者さまです。当院は日帰りの腹腔鏡手術を専門に行っていますが、70歳以上のご高齢の患者さまも多く来院されています。すでに仕事を辞められている方でも「数日入院して、自宅を離れるのは負担が大きい」と考えられるケースは多いため、手術前の検査で問題がない限りは日帰り手術を受けられるように体制を整えています。

加齢によって鼠径ヘルニアが起こりやすくなる原因

年齢を重ねると鼠径ヘルニアが発症しやすくなる理由について解説します。

筋膜の組織が弱まるため

鼠径ヘルニアは、足の付け根にある筋肉のすき間から、腸や内臓脂肪が飛び出す病気です。古くは脱腸と呼ばれてきました。

もともと男性は、胎児のときに体内でできた「精巣が通るための穴」が開いており、多くは生まれる前にふさがります。しかしその部分は筋肉がない、横筋筋膜という膜になっており、腹壁の中でも弱い部分となってしまいます。加齢とともに組織が弱くなったり、日常的にお腹に力がかかったりすることが原因で、皮膚の下まで風船のように広がることで鼠径ヘルニアを発症します。

男性が女性に比べて、また高齢者のほうが鼠径ヘルニアの発症リスクが高いのはこのような理由があるためです。

自然治癒はしない鼠径ヘルニアの放置は危険

鼠径ヘルニアは自然に治ることはありません。治療には外科手術が必要ですが、初期は痛みがなく、足の付け根が患部のために「恥ずかしい」と思われる方も多く放置されがちです。

しかし鼠径ヘルニアを放置していると、嵌頓という危険な状態になりかねません。嵌頓とは、飛び出した腸管が筋肉の穴にはまり込んだままになってしまう状態です。血流が止まり壊死すると、生命にかかわるため緊急手術が必要になります。

鼠径ヘルニアの典型的な症状である足の付け根にポコッとしたふくらみが現れたら、早めに医療機関を受診してください。

Q. 鼠径ヘルニアになりやすい年齢は?

鼠径ヘルニアは40代前半から70代前半までの中高年男性に多くみられます。加齢によって、お腹の中にある筋膜が弱くなることが主な理由です。

Q. 高齢者でも日帰り手術は受けられますか?

年齢にかかわらず、手術前検査で異常がなければ高齢の患者さまでも日帰り手術の適応となります。気になる症状があれば早めに受診してください。なお入院が必要な方には、受け入れ可能な病院をご紹介しています。

Q. 高齢で進行が遅ければ放置していても問題はありませんか?

鼠径ヘルニアの進行速度と年齢には、関係がありません。仮に進行が遅く、ふくらみの大きさが変わらない方でも、放置することで嵌頓のリスクがあります。年齢や発症からの日数によらず、嵌頓は起こりうるので早めの受診を心がけてください。

この記事の著者

菅間 剛(かんま たけし)

2007年、慶応義塾大学医学部卒業。横浜市立市民病院、練馬総合病院、千葉西総合病院、東京医科歯科大学医学部医歯学総合研究科、世田谷北部病院などの麻酔科に勤務し、5000件を超える手術麻酔を担当。2023年、調布駅前そけいヘルニアクリニック開院。
東京都調布市出身で、父も調布市内で「菅間医院」の院長をつとめる。

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