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鼠径ヘルニア手術後にリハビリは必要か?生活改善に必要なこと

2023.10.07

こんにちは。調布駅前そけいヘルニアクリニックの菅間(かんま)です。

鼠径ヘルニアは、日帰り手術によって治療できますが、手術後の生活の様子を気になさる方も多いようです。

来院された方からも

「運動はいつから再開できますか」
「何か特別なリハビリをしたほうがよいのでしょうか」

など、手術を受ける前の段階で、その後の回復についても把握しておきたいというご質問は多くあります。

そこで今回は、鼠径ヘルニアの手術後について、どのようなことに注意して生活すればよいかをお伝えします。

鼠径ヘルニアの手術が終わったら

鼠径ヘルニアは現在、年に30万人以上の患者さんが発症すると推定されています。多くの方がなりうる一般的な病気であり、日帰り手術で治療できるケースがほとんどです。

当院を例にとると、手術日の患者さんの滞在時間は約4時間ほどで、手術が終わった後の休憩時間も含みます。腹腔鏡を使った手術ではキズが小さく、一般的に日常生活への復帰も早まります。

なお、鼠径ヘルニアと診断を受け、手術するまでの流れは「鼠径ヘルニアとは」のページでくわしく解説しています。

当日は入浴と飲酒は控えてください

傷口は防水テープで覆われているので、手術当日からシャワーを浴びても問題ありません。浴槽につかるのは控えていただきますが、通常は手術の翌日からは可能です。

同じく手術当日は、アルコールの摂取は控えてください。飲酒や入浴などで血行がよくなると、痛みや内出血を引き起こす原因となります。手術の翌日以降は、普段どおり過ごしていただいてかまいません。

鼠径ヘルニアの手術後のトレーニングやリハビリ

手術を受けたあとの運動再開に向けた見通しを解説します。

激しい運動は手術後2週間程度控える

鼠径ヘルニアの手術後の運動は、痛みがおさまっていれば散歩などは翌日から再開しても特に問題はありません。

ただし身体に負担のかかる激しい運動は、手術後2週間程度は我慢していただいたほうがよいでしょう。鼠径ヘルニアの再発を予防するため体内にはメッシュが設置されますが、固定されるまで2週間ほど必要です。その前に腹部に負担のかかる激しい運動や重いものを持つことで再発や痛みが慢性化するリスクが高まります。

筋トレは逆効果のリスクあり

腹部に負担がかかりやすいため、重い荷物を持つことが多い宅配業や建設業などの仕事についている方は、鼠経ヘルニアになりやすいと言われています。

鼠径ヘルニアの患者さんが、筋トレや整体などで治そうとする話を聞いたことがありますが、筋トレや整体で鼠径ヘルニアが治ることはありません。これは筋力の低下ではなく、筋膜が弱くなることに鼠径ヘルニアの原因があり、筋膜は筋トレでは鍛えられないためです。腹筋運動などは、むしろ鼠径ヘルニアになる可能性を高めてしまう可能性があることは知っておいてください。

鼠径ヘルニアをすでに発症している方は、筋トレが原因で症状が悪化することも考えられるので、控えましょう。

専門的なリハビリテーションはない

手術直後から日常生活は問題なく送れるため、鼠径ヘルニアの手術を受けてからリハビリテーションを受ける必要はありません。術前・術後のリハビリが行われるのは、身体にかかる負担が大きく、術後に呼吸機能や運動機能などが低下するケースです。一方、当院で行う腹腔鏡手術は、キズも小さく手術時間は1時間前後で完了します。

わざわざリハビリを行う必要はありませんので、手術翌日以降に痛みを感じなければ、強度の高い運動を除いていつもどおり身体を動かすとよいでしょう。

鼠径ヘルニアの悪化を防ぐ生活改善のポイント

鼠径ヘルニアの再発率は低いものの、片方の足で発症した人は、反対側も鼠径ヘルニアになる可能性があります。鼠径ヘルニアにならないように、気をつけるべき普段の生活のポイントをお伝えします。

肥満をさける

そもそも鼠径ヘルニアは、腸管や内臓脂肪が皮膚の下まで飛び出してくる病気です。内臓脂肪が増えて、重みが増すと鼠径ヘルニアのリスクが高まります。太り気味の方は注意してください。

腹圧がなるべくかからないようにする

腹部に強い力のかかる生活習慣は、鼠径ヘルニアの原因となります。長時間の立ち仕事や重いかばんを持っての移動を避けるなど、生活の中で腹圧がかかる機会を減らす工夫をしましょう。

禁煙する

「喫煙者は鼠径ヘルニアになりやすい」と言われています。禁煙によって鼠径ヘルニアを予防できる可能性があります。

また咳が頻繁に出るときは、それだけ腹部に負担がかかっている点にも注意が必要です。

鼠径ヘルニアの手術後に関するQ&A

患者さんから多く聞かれる質問に対して回答します。

Q. 鼠径ヘルニアは筋肉を鍛えることで予防できますか?

鼠径ヘルニアは筋膜が弱くなって発症しやすくなります。いくら筋トレで筋肉を鍛えても、筋膜を鍛えることはできません。筋トレで腹部に力を込めると、鼠径ヘルニアをすでに発症している場合は悪化しやすくなるので注意が必要です。

Q. 鼠径ヘルニアの手術後、運動再開までの見通しは?

体内に入れたメッシュが固定されるまでの2週間程度は、激しい運動を控えてください。腹部に負担のかかる運動は慎重に再開する必要があります。

なお通常のデスクワーク、散歩程度の軽い運動は手術の翌日から再開してかまいません。

Q. 鼠径ヘルニアの手術後、痛みはどのくらい?

痛みがどのくらい残るかには個人差があります。手術当日と翌朝は痛み止めを服用されるケースが一般的です。翌日、通常どおり出勤される方も多く、デスクワークはほぼ問題ないでしょう。再発防止のためにも、力仕事は2週間程度は控えるようにしてください。

Q. 手術を受けたら抜糸や消毒が必要ですか?

鼠径ヘルニアの手術後の抜糸は行いません。体内で溶ける糸を使用するためです。また傷口を消毒するとかえってキズの治りが悪くなるリスクもあるので不要です。清潔な衣類を身に付けてください。

この記事の著者

菅間 剛(かんま たけし)

2007年、慶応義塾大学医学部卒業。横浜市立市民病院、練馬総合病院、千葉西総合病院、東京医科歯科大学医学部医歯学総合研究科、世田谷北部病院などの麻酔科に勤務し、5000件を超える手術麻酔を担当。2023年、調布駅前そけいヘルニアクリニック開院。
東京都調布市出身で、父も調布市内で「菅間医院」の院長をつとめる。

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