鼠径ヘルニアを放置するとどうなる?嵌頓・壊死のリスク
2025.12.19
足の付け根の膨らみが、横になると小さくなる。
痛みがないので、そのまま様子を見ている。
そのような場合でも、鼠径ヘルニアが治ったとは限りません。成人の鼠径ヘルニアは自然に治ることがなく、放置すると治療が緊急になる場合があります。
この記事では、放置によって起こりうる変化と、日帰り手術への影響を解説します。

鼠径ヘルニアを放置すると膨らみや違和感が増すことがある
鼠径ヘルニアは、お腹の中の組織が腹壁の弱い部分から出てくる病気です。膨らみが一時的に引っ込んでも、その弱い部分が元に戻ったわけではありません。
経過とともに膨らみが目立ち、歩行や仕事の際の不快感につながることがあります。進み方には個人差があるため、見た目の大きさだけで安全性を判断せず、一度診察を受けましょう。
嵌頓・腸閉塞・壊死につながる場合がある
飛び出した内容物が戻らなくなる状態を嵌頓と呼びます。さらに血流が妨げられると、腸の組織が壊死する危険があります。腸の通過が妨げられれば腸閉塞を起こし、重症化すると腹膜炎などにつながることもあります。
膨らみが戻らない、急に痛みが強くなった、吐き気や嘔吐がある場合は、通常の予約日を待たずに医療機関へ連絡してください。強い症状があるときは救急受診が必要です。無理に押し戻そうとしないでください。
仕組みや症状の詳しい説明は、嵌頓とは?痛みやリスクについてをご覧ください。
放置すると日帰り手術が受けられなくなることがある
状態が安定している段階では、予定を調整して日帰り手術を検討できます。一方、嵌頓などで緊急の処置が必要になった場合は、腸の状態を確認しながら治療し、入院での管理が必要になることがあります。腸の切除を伴う場合もあり、予定していた治療方法を選べるとは限りません。
また、腹部の手術歴や持病なども、術式と入院の必要性を判断する材料になります。「放置したら必ず腹腔鏡手術ができない」ということではありませんが、緊急性が高まると選択肢が狭まる可能性があります。
仕事や家庭への影響を抑えたい方ほど、症状が軽いうちに受診し、治療時期を相談することが大切です。
「どのくらい放置できるか」ではなく、まず診断を
一律に「この期間なら放置してよい」とはいえません。症状の少ない方では、医師が診察したうえで経過観察を提案する場合もありますが、自己判断で受診しないこととは異なります。
足の付け根の膨らみや違和感に気づいたら、症状と生活状況を伝え、治療の必要性を確認してください。
受診を急ぐ症状や、予定手術を相談するタイミングは、鼠径ヘルニアの手術時期と早期治療で解説しています。
この記事の著者

菅間 剛(かんま たけし)
2007年、慶応義塾大学医学部卒業。横浜市立市民病院、練馬総合病院、千葉西総合病院、東京医科歯科大学医学部医歯学総合研究科、世田谷北部病院などの麻酔科に勤務し、5000件を超える手術麻酔を担当。2023年、調布駅前そけいヘルニアクリニック開院。
東京都調布市出身で、父も調布市内で「菅間医院」の院長をつとめる。