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鼠径ヘルニアになりやすい人の職業とは?長時間の立ち仕事や重い荷物運びは危険か
2024.07.05
こんにちは。調布駅前そけいヘルニアクリニックの菅間(かんま)です。
鼠径ヘルニアはある種の「職業病」とも言われています。誰もが発症する可能性のある病気ですが、特定の職業の患者さんに多いことは、私の経験からもたしかだと思います。
具体的な職業を紹介するとともに、なぜ発症リスクが高まるのか、その原因について解説します。
鼠径ヘルニアになりやすい職業の傾向
鼠径ヘルニアになるリスクが高い代表的な職業は、長時間立っている仕事や重い荷物を運ぶことの多い仕事です。
具体的には
- 長時間の立ち仕事……料理人、理容師・美容師、店舗スタッフ、警備員
- 重い荷物を運ぶ……運送業、引っ越し業、倉庫業、工場勤務
当院がある調布市は「深大寺そば」が有名で、そば処として知られていますが、患者さんの中にはそば屋さんに勤務されている方、また寿司屋の板前さんが複数いらっしゃいました。
出勤から退勤まで1日中立ちっぱなし、大型家具の運搬などは体力面でハードなだけでなく、鼠径ヘルニアの発症リスクが高いと言われています。
このほか、吹奏楽器の演奏者や瞬発力で走ったり止まったりするスポーツ選手なども、鼠径ヘルニアになりやすいと言われています。
立ち仕事と重い荷物を持つ仕事のリスクが高い理由
立っているときと、重い荷物を持ち上げるときで共通しているのは、お腹のあたりに圧力がかかっていることです。これを腹圧と言います。
足の付け根(鼠径部)に膨らみができる鼠径ヘルニア(脱腸)は、腸の一部(腸管)や内臓脂肪が皮膚の下へ飛び出すために起こるものです。ふだん内蔵はお腹の中で腹膜という筋肉の壁で覆われていますが、鼠径部には腹膜がなく、筋膜だけしかない部位があります。
つまり鼠径部は、ほかの部位よりも圧力に弱いことになります。ここに長時間、圧力がかかることで、穴が開き鼠径ヘルニアを引き起こすのです。
また、トイレでいきむ行為や、くしゃみや咳(せき)も、腹圧のかかる動作で、発症につながることがあります。
鼠径ヘルニアになりやすい人は中高年男性
腹圧について、若いうちは心配する必要はありません。鼠径部の筋膜は加齢とともに少しずつ薄くなっていくため、鼠径ヘルニアの発症リスクは、40代以上で急激に高まります。
また身体の構造上、女性よりも男性のほうが圧倒的に多く鼠径ヘルニアを発症します。
中高年男性で、立ち仕事や重い荷物の持ち運びをする方は特に注意が必要です。
肥満や生活習慣も発症リスクを高める
鼠径ヘルニアは男性のうち3人に1人が生涯のうちにかかると言われています。どれだけ気をつけていても、ある日突然鼠径ヘルニアになるケースも多いので、完全に予防することはできません。
ただし生活習慣を見直せば、多少発症リスクを抑えられる可能性はあります。
- 肥満である
- 喫煙している
- 便秘がちである
内臓脂肪が多いと、鼠径ヘルニアの原因が増えることになるので発症リスクが高まります。肥満気味の方は、体重を落とすだけでも鼠径ヘルニアのリスク軽減につながるはずです。
タバコを吸い続けると、慢性的に気道が狭くなり、その結果呼吸のたびに腹圧がかかりやすくなります。その結果、鼠径ヘルニアが発症する確率も高まると考えられます。
鼠径ヘルニアを発症したら早めの受診を
もし突然、足の付け根にふくらみができたことを見つけたら、鼠径ヘルニアの疑いがあるので、一度医療機関を受診してください。
痛みがないので、つい放置されがちですが、やがて嵌頓(かんとん)という危険な状態になりかねません。飛び出した腸の血流が途絶えると、生命にかかわることもあります。治療には手術を受けるしかありませんが、その前に当院の無料LINE相談も、活用してください。
Q:脱腸しやすい人はどのような人ですか?
脱腸と鼠径ヘルニアは同じ病気を表す言葉です。重いものを持つ、長時間立ち仕事をするなど、腹圧のかかる場面が多い人は、脱腸、つまり鼠径ヘルニアになりやすいと言われます。便秘、肥満、前立腺肥大、喫煙、出産、慢性的な咳やくしゃみなども発症リスクを高めると考えられます。
あわせて「鼠径ヘルニアの原因となる生活習慣は?予防につながる方法がある」の記事もお読みください。
Q:鼠径ヘルニアは何人に1人くらいですか?
鼠径ヘルニアは、中高年男性の発症が特に多い病気です。年間数十万人が発症していると推定され、生涯を通じて男性の3人に1人は、鼠径ヘルニアになると言われています。
ただし、早めに受診すれば日帰り手術によってすぐ完治するケースがほとんどです。
この記事の著者
菅間 剛(かんま たけし)
2007年、慶応義塾大学医学部卒業。横浜市立市民病院、練馬総合病院、千葉西総合病院、東京医科歯科大学医学部医歯学総合研究科、世田谷北部病院などの麻酔科に勤務し、5000件を超える手術麻酔を担当。2023年、調布駅前そけいヘルニアクリニック開院。
東京都調布市出身で、父も調布市内で「菅間医院」の院長をつとめる。