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鼠径ヘルニアと便秘が関係あるのはなぜ?術後の注意点は?
2024.07.06
こんにちは。調布駅前そけいヘルニアクリニックの菅間(かんま)です。
お通じの悩みが鼠径ヘルニア(脱腸)と関係していることは、意外に知られていません。鼠径部(足の付け根)と、便通には実は関連性があります。
便秘によって鼠径ヘルニアになりやすくなるほか、悪化させてしまう恐れもあります。また鼠径ヘルニアの手術を受けた後、一時的に便秘になりやすくなる点も知っておきましょう。
鼠径ヘルニアに関係の深い、腹圧(お腹にかかる圧力)について解説します。
鼠径ヘルニアと便秘の関係
鼠径ヘルニアの典型的な症状は、足の付け根に柔らかいふくらみができることです。体を横にしたり、ふくらみを押しこんだりすると、一時的にふくらみが引っ込んだように見えるのも特徴です。
慢性的な便秘は、鼠径ヘルニアの発症リスクを高めます。鼠径ヘルニアの一番の大敵は腹圧がかかること。つまり腹部に力をこめた状態です。トイレで便が出づらいときに、お腹に力をこめて、いきんだ経験があるかと思います。
ふくらみの正体は、皮膚の下まで飛び出した腸管や内臓脂肪です。お腹に力のかかりやすい便秘は、このふくらみをさらに外へ押し出そうとしてしまうので、悪化にもつながります。
鼠径ヘルニアの診断方法や治療について、くわしくはこちらをご覧ください。
腹圧の上昇が鼠径ヘルニアの原因になる
お腹に圧力がかかるのは、トイレのときだけではありません。咳やくしゃみでも、お腹に圧力がかかるため、鼠径ヘルニアの発症につながる可能性があります。したがって、重い荷物を持つ仕事や立ち仕事をしている方も鼠径ヘルニアになりやすいといえます。
鼠径ヘルニアを発症したら嵌頓(かんとん)に注意
足の付け根にふくらみができるなど「鼠径ヘルニアかな…」と思ったら、早めに医療機関を受診することをおすすめします。
鼠径ヘルニアを放置すると、少しずつふくらみが大きくなったり、痛みが強くなったりする可能性があります。さらに嵌頓と呼ばれる状態になると危険です。
嵌頓とは、皮膚の下へ飛び出た腸が穴にはさまり、戻らなくなる状態で、穴で締め付けられた腸の血流が途絶えると、やがて腐ってしまいます。
腹圧がかかると、腸管が押し込まれるため、嵌頓になるリスクは高まると考えられています。食生活や運動など普段の生活習慣の改善、便秘薬を使用するなど、便秘の予防や解消につとめましょう。
鼠径ヘルニア手術直後は一時的に便秘になりやすい
鼠径ヘルニアの治療方法は手術だけです。当院のような腹腔鏡を使った日帰り手術なら、最短で手術翌日から仕事に復帰できるなど、身体にかかる負担も比較的少なく治療できます。
腹腔鏡手術の直後はほとんどの方が便秘を起こします。便秘によってお腹に力がかかりやすい状態だと、手術で挿入したメッシュがずれたり、手術でできたキズの回復にも悪影響を及ぼします。そのため当院では手術後に緩下剤を処方し、患者様に飲んでいただいています。
手術翌日でも痛みがなければ、ウォーキングなどの軽い運動を再開してもかまいません。寝起きにコップ一杯の水分を補給したり、規則正しい排便を心掛けたりすることが大切です。ウォシュレットで肛門の周りを直接的に刺激するほか、便秘薬を使うなどが対策として考えられます。
Q.鼠径ヘルニアと便秘の関係は?
便秘が続くと、お腹に圧力がかかりやすくなり、鼠径ヘルニアの発症リスクは高まります。また発症後も、お腹に圧力がかかることで鼠径ヘルニアの悪化を招く恐れもあります。
便秘の予防、解消につとめたほうがよいでしょう。
Q.鼠径ヘルニアでガスがたまりますか?
鼠径ヘルニアには腸管が入り込むことが多いため、その場合は腸の動きが悪くなり、ガスが溜まることがあります。
ガスがたまる原因は鼠径ヘルニアだけではないかもしれませんが、手術後は腸管の動きが正常に戻り、症状も改善していくと考えられます。
この記事の著者
菅間 剛(かんま たけし)
2007年、慶応義塾大学医学部卒業。横浜市立市民病院、練馬総合病院、千葉西総合病院、東京医科歯科大学医学部医歯学総合研究科、世田谷北部病院などの麻酔科に勤務し、5000件を超える手術麻酔を担当。2023年、調布駅前そけいヘルニアクリニック開院。
東京都調布市出身で、父も調布市内で「菅間医院」の院長をつとめる。