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鼠径部のふくらみや痛みの原因は鼠径ヘルニア?早期発見の重要性

2023.07.22

こんにちは。調布駅前そけいヘルニアクリニックの菅間(かんま)です。

もし「鼠径部(足の付け根)にふくらみや痛みがみられ、鼠径ヘルニアかも?」と感じられていたら、早期発見のタイミングかもしれません。

人によって差はありますが、鶏卵やピンポン玉のような大きさの丸いふくらみ、でっぱりが見つかったら鼠径ヘルニアの可能性が高いでしょう。ほとんどが片足だけに見られますが、まれに両足の鼠径部にふくらみが現れることもあります。

ふくらみに気づいたら早めに医師の診察を受けることをおすすめします。今回は鼠径ヘルニアの早期治療の必要性について解説しますので、気になる症状がある方はご参考になさってください。

鼠径部にできるふくらみと痛みの原因とは

足の付け根の部分を鼠径部といいます。腹部と太ももの間あたりで、内部には動静脈やリンパや神経などが集まっています。

鼠径部を覆う筋膜が加齢とともに弱くなると、内部にある腸管や内臓脂肪が筋膜の外へ飛び出してしまいます。これが鼠径ヘルニア(脱腸)の仕組みです。

足の付け根にふくらみができ、次のような症状がある場合は、鼠径ヘルニアの可能性があります。

・手で押したり、横になったりするとおさまるが、やがて再びふくらむ

・下腹部に違和感や不快感、張りがある

・ときどき下腹部に刺すような痛みを感じる

立つ時間が長くお腹に圧力がかかる動作などが、鼠径ヘルニアの発症につながると考えられています。

鼠径部にふくらみがあれば鼠径ヘルニア?

「鼠径部がふくらんだら、すべて鼠径ヘルニア」ではありません。鼠径ヘルニアと症状が類似していて間違えやすい病気を紹介します。

リンパ節の腫れ

鼠径部にあるリンパ節が炎症により腫れる疾患です。その原因は怪我から水虫や性感染症など様々です。リンパ節は、リンパ液を流れる細菌やウイルスなどをせき止め、感染を防いだり、異物の侵入を排除したりします。

鼠径ヘルニアとの違いは、横になってもふくらみが消えない点です。超音波検査を行うと、鼠径ヘルニアと診断できます。

静脈瘤(じょうみゃくりゅう)

体内をめぐった血液は、静脈を通って心臓に戻ります。足の静脈が太くなってこぶのように浮き出た状態が下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)です。通常は足(ふくらはぎなど)の筋肉がポンプの機能を果たして血液を心臓へ押し戻していますが、この機能が弱くなると血液がたまりやすくなり、静脈瘤の発症につながります。

鼠径部に静脈瘤ができて、血管が腫れた場合に鼠径ヘルニアと誤認される可能性があります。

子宮内膜症(女性)

子宮内膜症は、卵巣や子宮にできるものが広く知られていますが、足の付け根に発症して鼠径部に痛みを伴う場合のある疾患です。妊娠可能な年齢の女性に見られます。

水腫

20〜40代の女性で、まれにNuck(ヌック)管水腫と呼ばれる鼠径管内に水がたまる病気が見られます。

鼠径ヘルニアによく似た症状ですが、鼠径ヘルニアを併発することもあります。子宮内膜症を伴い悪性化する恐れがあるため袋状の水腫を切除して治療します。

男性でも、精索水腫や陰嚢水腫などが起こりますが、ほとんどが1歳未満の乳児です。自然治癒することが多いものの、小児の鼠径ヘルニアを合併する場合もあります。

鼠径ヘルニアによる痛みの正体

鼠径ヘルニアの症状が軽い段階では、違和感や不快感がある程度で痛みを感じない場合も少なくないようです。ただし進行とともに痛みが現れて、ふくらみも大きくなったら要注意です。

この痛みは、ふくらみの内部に腸管がはまり込んだことで起こるものです。腸管が抜ければ痛みはおさまりますが、はまったまま抜けなくなると強烈な痛みにつながってしまうかもしれません。

放置すると嵌頓(かんとん)を起こす危険性がある

ふくらみが硬くなり、大きくなっても放置しているのは危険です。

やがて腸がはまり込んで、戻らなくなってしまい、飛び出した腸管が絞め付けられる恐れがあります。このように血流障害が起きる状態を嵌頓(かんとん)と言い、生命にも危険が及びかねません

腸閉塞や腸壊死を招き、緊急手術で腸を切除する事態になる前に、早期発見および早期治療を心がけてください。

嵌頓については、以下記事も参考になさってください。

鼠径ヘルニアの嵌頓とは?かかる確率や痛み・リスクを専門医が解説

早期発見すれば日帰り手術を適応できる可能性も高い

鼠径ヘルニアは手術でしか治せませんが、既往症のある方など例外を除けば日帰り手術が可能です。入院が不要なので、仕事を休む期間も最小限で済むでしょう。

ただし発見と治療が遅れることで、本来なら日帰り手術を受けられるはずの方が、適応できなくなってしまう恐れもあります。特に放置した結果、症状が進み嵌頓状態になったら、日帰り手術はほぼ不可能です。

気になる症状がある場合は、まず一度診察を受けて鼠径ヘルニアかどうかを調べてもらいましょう

鼠径部のふくらみや痛みに関するQ&A

患者さんから多く寄せられる質問に対して回答します。

Q. 鼠径部のふくらみは鼠径ヘルニアの可能性が高いでしょうか?

鼠径ヘルニア(脱腸)は、鼠径部のふくらみが現れたときの代表的な疾患です。よく似た症状の病気と間違われる可能性もありますが、CT検査などで確定診断が可能です。気になる症状があれば、早めに医療機関を受診されることをおすすめします。

Q. 鼠径ヘルニアを発症したときの痛みは?

初期症状はふくらみが現れて、違和感や不快感はあっても痛みを感じないことが多いようです。ただし進行とともに痛みは強くなり、嵌頓と呼ばれる緊急手術が必要になる場合もあるので、早期発見および早期治療が大切です。

Q. 鼠径部がふくらむ鼠径ヘルニアの原因とは?

鼠径ヘルニアは中高年男性に多い病気です。直接的には腹部に強い圧力がかかることが原因です。加齢により筋肉が弱くなるところに、お腹の脂肪が増えたり、重いものを持ちあげたりすることがきっかけで鼠径ヘルニアを発症するケースが見られます。

この記事の著者

菅間 剛(かんま たけし)

2007年、慶応義塾大学医学部卒業。横浜市立市民病院、練馬総合病院、千葉西総合病院、東京医科歯科大学医学部医歯学総合研究科、世田谷北部病院などの麻酔科に勤務し、5000件を超える手術麻酔を担当。2023年、調布駅前そけいヘルニアクリニック開院。
東京都調布市出身で、父も調布市内で「菅間医院」の院長をつとめる。

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