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鼠径ヘルニアは遺伝するか?医師の間でも意見が割れるテーマについて

2024.06.25

こんにちは。調布駅前そけいヘルニアクリニックの菅間(かんま)です。

鼠径ヘルニアは中高年男性に多い病気です。読者の皆さんのうち、中には父や祖父が鼠径ヘルニア(脱腸)を患ったことがあるという方がいるかもしれません。

家族に鼠径ヘルニアの方がいると、遺伝するのか? これは医師の間でたびたび議論されてきたテーマです。

今回は、私見を述べるとともに鼠径ヘルニアのメカニズムについて考えてみたいと思います。

鼠径ヘルニアと遺伝の関係は明らかになっていない

まずは医学的な最新情報からお話しすると、鼠径ヘルニアのなりやすさと遺伝の関係をはっきり示したエビデンスはありません。つまり遺伝するとも、遺伝しないともいい切れないというのが結論になります。

個人的な意見としては、生まれつき結合組織が弱い家系があるように、遺伝は一部の人の鼠径ヘルニア発症に影響する「可能性はある」と考えています。

ただし「遺伝する」と学術的に証明されたことはないのが実態なのです。

鼠径ヘルニアは多くの人が発症する病気

「鼠径ヘルニアが遺伝するか?」という議論とは別に、お伝えしておきたいのは、鼠径ヘルニアはそもそも非常に多くの方が発症しやすい疾患だということです。

男性の全人口のうち、3分の1程度が一生のうちに発症することがあるといわれており、日頃から気をつけていても、どなたでも発症の可能性があります。

鼠径ヘルニアは、年間で約14万人が手術を受けており、積極的な治療を受けていない潜在的な患者さんをふくめると、さらに大きな数となることはご理解いただけるかと思います。

子どもの鼠径ヘルニアは遺伝が関係するという指摘

子どもの鼠径ヘルニアは、すべて先天性のものです。こちらも遺伝と関係あるという明確な根拠はありませんが、一般的に親子で体質が似ることはあるため、鼠径ヘルニアを発症した子どもの家族にも過去に発症歴を確認できることも多く見られます。

なお、お子さんの手術は大人と術式が異なるため、当院では対応しておりません。小児外科のある病院での治療をおすすめしています。

Q:鼠径ヘルニアはどんな人に多いですか?

鼠径ヘルニアになりやすいと言われているのは、重いものを持つことの多い仕事や、立ち仕事など腹圧がかかる場面が多い人です。便秘、肥満、前立腺肥大、喫煙、出産、咳(せき)やくしゃみなども発症の原因になると考えられます。

あわせて「鼠径ヘルニアの原因となる生活習慣は?予防につながる方法がある」の記事もお読みください。

Q:鼠径ヘルニアは生まれつきですか?

鼠径ヘルニアには、生まれつき(先天性)のものと、年齢を重ねてから発症する後天性のものがあります。単純に捉えると、子どもの鼠径ヘルニアは先天性で、大人の鼠径ヘルニアは後天性と整理するとわかりやすいでしょう。高齢になると、立ったり座ったり、腹部に力を込めたりなどの繰り返しや、加齢によって鼠径部の筋膜が衰えることが原因で鼠径ヘルニアを発症します。

この記事の著者

菅間 剛(かんま たけし)

2007年、慶応義塾大学医学部卒業。横浜市立市民病院、練馬総合病院、千葉西総合病院、東京医科歯科大学医学部医歯学総合研究科、世田谷北部病院などの麻酔科に勤務し、5000件を超える手術麻酔を担当。2023年、調布駅前そけいヘルニアクリニック開院。
東京都調布市出身で、父も調布市内で「菅間医院」の院長をつとめる。

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