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ナフサショックで医療に影響?中東情勢と鼠径ヘルニア手術の意外な関係

こんにちは、調布駅前そけいヘルニアクリニック院長の菅間(かんま)です。
「先生、早く手術したほうがいいですか?」
最近、外来でそんな質問をよく受けます。
足の付け根にふくらみが出てきて、「そろそろ手術を考えようか」と思っているけれど、なかなか踏み切れなかったというお話を聞きます。
実はこのところ、私もひとつ気になっていることがあります。テレビでも連日報道されている中東の情勢です。「えっ、それと手術が関係あるの?」と思われるかもしれません。でも、これが意外と、あなたの手術に無関係ではないんです。
今、「ナフサ」が不足している
ニュースで「ナフサショック」という言葉を耳にしたことはありますか?
ナフサ(naphtha)とは、石油を精製するときに取り出される液体で、プラスチックや合成繊維などを作る「化学製品の原料」です。私たちの身の回りにあるものの多くは、実はナフサからできています。
そしてこのナフサ、アジアで使われる量のおよそ60%が中東から輸入されています。
中東情勢が悪化して輸送ルートが混乱すると、ナフサの供給が滞り、値段が急騰します。これが「ナフサショック」と呼ばれる状態です。今年に入ってからナフサの価格はおよそ60%も上昇しており、その影響が医療現場にも静かにおよびはじめています。
手術に使う道具はナフサからできている
「プラスチックの原料が上がっても、病院には関係ないのでは?」と思われるかもしれません。ところが、手術室の中を見回すと、ナフサ由来の素材で作られたものだらけです。
- 手袋・マスク・ガウン(合成繊維製)
- 点滴バッグや注射器(プラスチック製)
これらはすべて、使い捨ての消耗品です。ナフサショックによる原材料の値上がりで、手術用手袋はすでに4割ほど値上がりし、点滴バッグの材料も高騰が続いています。
「今すぐ手術できなくなる」というわけではありませんが、医療の現場では「材料の確保が以前より難しくなってきた」という実感が出始めているのは事実です。
鼠径ヘルニアは自然治癒しません
ここで大切なことをお伝えします。
鼠径ヘルニアは、残念ながら自然には治りません。
ふくらみが気になる程度のうちは日常生活も送れますが、放っておくと、腸が飛び出したまま戻らなくなる「嵌頓(かんとん)」という状態になることがあります。これは緊急手術が必要になる、とても危険な状態です。
また、時間が経つほどまわりの組織と癒着して、手術が難しくなることもあります。
今がいちばん安心して手術できるタイミングかもしれません
中東情勢の影響がどこまで広がるか、まったくわかりません。ただ、専門家の間では「ナフサショックによる医療材料の不足は、数年単位で続く可能性がある」という見方が出ています。
いまは幸い、手術に必要な器具も、担当できる医師も、きちんと揃っています。
「どうしようかな」と迷っている方にとって、今がいちばん落ち着いて治療を受けられる状況だと、私は感じています。
「手術するかどうか、まだ決めていない」でもかまいません。今の状態がどれくらいのリスクなのかを一緒に確認して、あなたに合ったペースで考えていきましょう。
大事な体のことです。先送りせずに、ぜひ早めにご相談ください。
この記事の著者

菅間 剛(かんま たけし)
2007年、慶応義塾大学医学部卒業。横浜市立市民病院、練馬総合病院、千葉西総合病院、東京医科歯科大学医学部医歯学総合研究科、世田谷北部病院などの麻酔科に勤務し、5000件を超える手術麻酔を担当。2023年、調布駅前そけいヘルニアクリニック開院。
東京都調布市出身で、父も調布市内で「菅間医院」の院長をつとめる。