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足の付け根にできた“ふくらみ”は鼠径ヘルニアのサイン?早めの受診が重要な理由

2023.08.22

こんにちは。調布駅前そけいヘルニアクリニックの菅間(かんま)です。

以前に「鼠径部のふくらみや痛みの原因は鼠径ヘルニア?」という記事でも紹介しましたが、足の付け根にふくらみやしこりができたときは、鼠径ヘルニアの疑いがあります。

ただし、これらの症状がすべて鼠径ヘルニアというわけではありません。ご自身で判断するのは難しいので、気になる症状があれば早めに医療機関を受診することをおすすめします。

足の付け根に“ふくらみ”ができる原因

足の付け根の部分を鼠径(そけい)部といいます。

通常、お腹の内側では筋肉と筋膜(筋肉を包んでいる膜)が臓器を守るように覆っており、臓器が筋膜の外へ飛び出すことはありません。しかし、筋肉の境目に位置する鼠径部は筋膜のみで覆われていて、加齢とともに筋膜が弱くなると筋膜と内部の腸管などが飛び出してしまいます。これを鼠径ヘルニアまたは脱腸(だっちょう)といいます。

鼠径ヘルニアの兆候と見分け方

鼠径ヘルニアを発症すると、腸管などが筋膜の外へ飛び出してくるため、ピンポン球と同じ大きさ程度のふくらみ、しこりが現れます。

初期から痛みをともなうことは少なく、ふくらみが突っ張ったり、引っ張られたりする感覚により不快感や違和感を覚えるケースが多く見られます、手で押し込むと、一時的にふくらみが体内に引っ込むように感じられるのは、鼠径ヘルニアの典型的な症状です。

中高年の男性に多く、だれでも発症する可能性がある病気です。

他の病気と区別するには

足の付け根にふくらみが現れる病気には、鼠径ヘルニア(脱腸)のほかにも次のような疾患があります。

  • ●リンパ節の腫れ
  • ●静脈瘤【じょうみゃくりゅう】
  • ●子宮内膜症(女性)
  • ●水腫(Nuck管水腫【ヌックかんすいしゅ】:女性、陰嚢・精索水腫:男性)

いずれも発症するメカニズムは、鼠径ヘルニアとはまったく別の病気です。鼠径ヘルニアの症状として他の疾患と異なるのは、ふくらみを手で押し込んだり、身体を横にしたりするとふくらみが見えなくなる点です。他の疾患では、ふくらみが消えることはないので、見分け方として知っておくとよいでしょう。

ただ自己診断は難しいので、外科や消化器外科、もしくは当院のような鼠径ヘルニアの専門クリニックを受診してください。

鼠径ヘルニアの診断方法

鼠径ヘルニアの診断の際は、まず医師が視診・触診を行います。次にCT検査や超音波(エコー)検査を行うとほぼ確実に鼠径ヘルニアを診断できます

CTは、X線で体の断面図を撮影する方法です。大型で高度な装置に驚かれるかもしれませんが、その分精密な検査が可能なため、多くの医療機関で一般的に使用されています。

基本的に、検査を受けたその日のうちに、鼠径ヘルニアか、別の病気が考えられるかを診断できます。

鼠径ヘルニアと診断された場合は、ふくらみを放置して嵌頓(かんとん)を起こす前に、手術で治療しましょう。やがて鼠径部にできた空間に、腸がはまり込んでしまい絞め付けられるリスクがあります。血流障害をもたらし、生命にも危険が及びかねません。

足の付け根にふくらみを見つけたら、早めに医療機関を受診することが大切です。

足の付け根の“ふくらみ”に関するQ&A

患者さんから多く聞かれる質問に対して回答します。

Q. 足の付け根のふくらみを放置するとどうなりますか?

一度発症した鼠径ヘルニアが自然に回復することはありません。根本的な治療には手術が必要です。放置し続けると、ふくらみが大きくなったり、痛みがあらわれたりする場合があります。

Q. ふくらみは手で押し込むと隠れます。痛みもなく問題ないですね?

足の付け根のふくらみやしこりを手で押し込んで見えなくなるようなら、鼠径ヘルニアの可能性が高いといえます。横になるとふくらみが消えるように感じられる場合もありますが、いずれのケースも、再びふくらみが現れるでしょう。一度、医療機関を受診して検査を受けることをおすすめします。

Q. 足の付け根のふくらみが鼠径ヘルニアだと診断されたら?

超音波検査などで鼠径ヘルニアと診断されたら、早めに手術を受けて治療されたほうがよいでしょう。鼠径ヘルニアを根治するには手術を受けるしかありません。ただし、当院で行う腹腔鏡手術は日帰りでの適応が可能で、痛みも少ないのが特徴です。そのため早期に仕事へも復帰できる点が大きなメリットです。

この記事の著者

菅間 剛(かんま たけし)

2007年、慶応義塾大学医学部卒業。横浜市立市民病院、練馬総合病院、千葉西総合病院、東京医科歯科大学医学部医歯学総合研究科、世田谷北部病院などの麻酔科に勤務し、5000件を超える手術麻酔を担当。2023年、調布駅前そけいヘルニアクリニック開院。
東京都調布市出身で、父も調布市内で「菅間医院」の院長をつとめる。

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