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手術前の「飲水制限」はもう古い?高齢者の熱中症・脱水予防のために知っておくべきこと
2026.07.22

こんにちは。調布駅前そけいヘルニアクリニック院長の菅間(かんま)です。
暑い季節になると、とくに気をつけなければならないのが熱中症や脱水症状です。とくに高齢者の方は、喉の渇きを感じにくくなるため、意識的な水分補給が欠かせません。
さて、当院で鼠径ヘルニア(脱腸)の手術を受けられる患者様から、「手術の前は、水を飲んではいけないんですよね?」とご質問をいただくことがよくあります。
結論からお伝えすると、当院では手術の2時間前までは、お水やお茶などの水分を摂っていただいて大丈夫です。
むしろ、脱水を予防するために、「しっかり水分をとってからご来院ください」とお伝えしています。
今回は、なぜ手術前の水分補給が重要なのか、昔と今の手術前準備の違いについてお話しします。
ひと昔前の過酷だった「術前準備」
私が医者になった20年ぐらい前は、手術前の準備といえば非常に過酷なものでした。
「手術の前日から食事も水分も一切禁止(絶飲食)」というのが当たり前で、さらに下剤や浣腸をされ、尿道カテーテル(おしっこの管)まで入れられていた時期があったのです。
喉がカラカラに渇いた状態で、緊張しながら手術室へ向かう……。当時の患者様の負担は、今思い返しても大変なものだったと思います。
しかし現在では、日本麻酔科学会が策定した「術前絶飲食ガイドライン」では、「清澄水※」であれば年齢を問わず麻酔導入の2時間前まで摂取しても安全であると推奨されています(推奨度A)。
| ※清澄水(せいちょうすい)とは水、お茶、果肉を含まないリンゴジュース、スポーツドリンク、経口補水液、ミルクを入れないコーヒー・紅茶など、透き通った飲料のことを指します |
参照元:公益社団法人日本麻酔科学会 術前絶飲食ガイドライン より引用
そのため、現在では手術の2時間前まで水分の摂取が認められているのです。
なぜ手術前に「むしろしっかり」水分をとるべきなのか?
「飲んでもいい」というだけでなく、私たちは「むしろしっかり水分をとってほしい」と考えています。それには、主に3つの重要な理由があります。
1. 全身麻酔時の「血圧の低下や脈拍の上昇」を防ぐため
人間の体は、脱水状態になると血液の量が減ります。その状態で全身麻酔をかけると、血圧が急激に下がったり、頻脈になることで心臓に無理がかかり、心疾患などにつながるリスクが高くなります。安全に麻酔をかけ、手術を行うためには、体の中を十分な水分で満たしておく必要があるのです。
2. 点滴(ルート確保)をスムーズにするため
手術前には、必ず腕などから点滴をします。しかし、体が脱水状態だと血管の中の水分も減ってしまい、血管がペシャンコになって腕に浮き出てこなくなります。
患者様に痛い思いを何度もさせないためにも、しっかり水分をとって血管をふっくらさせておくことが大切です。
3. ご来院時の「熱中症」を防ぐため
当院は日帰り手術を行っているため、患者様にはご自宅からクリニックまで足を運んでいただきます。とくに夏場は、ご来院の道中で熱中症になってしまう可能性もゼロではありません。
過度な飲水制限をしてご来院いただくことは、とくに体力に不安のある高齢者の方にとって非常に危険です。道中の安全を守るためにも、お出かけ前の水分補給をお願いしています。
まとめ:安心して手術を受けていただくために
「手術前は絶飲食」というイメージを長く持たれている方(とくに以前に別の手術を経験されたことのあるご高齢の方)ほど、水分をとることに抵抗を感じてしまうかもしれません。
しかし、現在は医学の進歩とともに、患者様にとってより安全で、より負担の少ない方法へとルールが大きく変わっています。
調布駅前そけいヘルニアクリニックでは、患者様が少しでもリラックスして、安全に手術に臨めるようサポートいたします。ご来院の際は、熱中症や脱水に十分お気をつけて、指定の時間まではしっかり水分をとっていらしてくださいね。
鼠径ヘルニア(脱腸)の症状でお悩みの方は、どうぞお気軽に当院までご相談ください。
この記事の著者

菅間 剛(かんま たけし)
2007年、慶応義塾大学医学部卒業。横浜市立市民病院、練馬総合病院、千葉西総合病院、東京医科歯科大学医学部医歯学総合研究科、世田谷北部病院などの麻酔科に勤務し、5000件を超える手術麻酔を担当。2023年、調布駅前そけいヘルニアクリニック開院。
東京都調布市出身で、父も調布市内で「菅間医院」の院長をつとめる。